フランス在住の作者カタヒラヨシミより

パリのカフェ

パリ生活を始めて早十数年。留学生として来た当初からパリでよく行く場所といえば「カフェ」である。仕事柄家に引きこもりがちなワタシにとって、カフェというのはアイディアが煮詰まった時に気分転換のための逃げ場所なのである。

そんなパリのカフェ、実はここ数年変わって来ている。それは、テーブルや椅子がオシャレなリサイクル品で揃えられ、オーガニックのコーヒーや紅茶が出されるいわゆるBOBO(ボボ)向けのカフェである。BOBOとはBourgeois Bohémien 

(ブルジョワ・ボエミアン)の略で、「金銭的に余裕があり、おしゃれな生活をしている人」のことである。多くの日本人が雑誌やテレビでみる「パリ」のほとんどがBOBO文化のものである。そんなBOBO(ボボ)向けのカフェ、店員は若くフレンドリーの人が多く、商品も質よりも見た目やコンセプト、値段はもちろん「安い」よりも「高い」の傾向がある。

正直、オシャレで居心地も悪くないのであるがつまらない。

ワタシの好きなパリのカフェ、それはカウンター席に安コーヒー一杯で何時間も居座り文句ばかり言っている常連たちがいて、ウエイターが無愛想で大きくガチャガチャ音を立てながらカップやお皿を片付ける、いわゆる「昔ながらの庶民派カフェ」である。

それがBOBO向けカフェに押され減少していっているのである。

さみしい。非常にさみしい。確かに庶民派カフェではウエイターが注文をなかなか聞きに来てくれなかったり、聞きに来ても非常に無愛想、もしくは必要異常に優しすぎて下心丸見えだったり、カウンターにいる店員の態度が傲慢で嫌味っぽかったり、コーヒーがびっくりするくらい不味かったり、常連からジロジロ見られ面白くない冗談を言われたりと、思い出しても不快なことはたくさんあったけど、そこがパリのカフェの魅力でもあった。

そう、パリには不快で不自由な事がたくさんあるからこそ、人間味のある面白い街なのだ。そんな庶民派カフェが失われつつあるのは何ともさみしい。なんて言っているワタシは、重症なパリ好きかもしれない。

*写真は典型的なBOBO向けカフェ「La Recyclerie ラ・ルシクルリ 」(パリ18区)。

庶民派カフェが好きと言いながら、便宜上、現在ワタシよく行くカフェである。

サイトhttp://www.larecyclerie.com/