台風10号の細かい被害状況はまだあまりわかっておりませんが、先日の熊本の水害に合わせて、被害が拡大していないことを祈るばかりです。
養殖産業にも台風は大きな被害をもたらします。
実は昨年の台風15号により全国的に養殖産業者に被害が出ておりました。
中でも被害が出るのが牡蠣事業者です。このブログでも紹介している通り、日本では牡蠣棚や垂下式でブイから海中に垂らしているものがほとんどです。牡蠣棚は瀬戸内海を中心に、垂下式は東北を中心に実施されています。
この二つの方式のどちらも弱点は海が荒れることです。
比較的穏やかな湾だから養殖が成り立ちますが、台風などが起きた場合、棚が落ちたり、ロープに付着している牡蠣が落ちたり、ロープごと無くなったりします。
昨年、記憶に新しい台風15号は日本中に大きな被害をもたらしました。当然、牡蠣事業者にもダメージはあります。例えば宮城県では東松島のブランド牡蠣の「鳴瀬かき」は約2割が台風15号の影響で海底に落ちてしまい、出荷減となりました。
全滅しても良い規模の台風だったため、2割で済んだのは助かったとのことでしたが、そこには生産者の長年の感もあり、全滅を免れていました。
鳴瀬かきは筏での養殖ですが、台風が強くなるとわかった段階で、浮力を下げ、ロープを海底に長めに伸ばしたようです。その為、荒れ狂う海の状況で少しで揺れを抑えたことが被害を最小に食い止めた要因となりました。
また同じ台風15号の影響で長崎の諫早湾では8割が死滅してしまいました。過去20年のキャリアの中でもここまでの被害は初めてだということでした。
この8割減の理由は実は台風だけでなく、別の理由がありました。
それは降雨量による塩分濃度の低下です。
牡蠣の養殖では雨量により山からの恩恵を受けるというような話がよくありますが、全く逆のパターンで、あまりに多い豪雨などでは湾内の塩分濃度が下がってしまうと言った側面があったようです。
海水温の上昇により、日本の海域での台風は大きくなるものとみられています。
当然、降雨量も増えるでしょう。
水産業界にとっては向かい風ですが、生産が頑張れない時は、販売側が知恵をしぼる。
そんな流れが出来たら良いですね。