今回は沖縄と牡蠣というテーマで書いてみたいと思います。

1.沖縄の牡蠣
2.沖縄と牡蠣の養殖の深い関係
3.沖縄の牡蠣の養殖の現在
4.沖縄で牡蠣の養殖ができるということの意味

1.沖縄の牡蠣

 数年前に、那覇の公設市場で「沖縄の牡蠣ありますか?」と聞いたところ、「牡蠣は取れないよ」と言われたため、沖縄には牡蠣がいないと思っていました。(もちろん流通の関係で、広島産や宮城産のものはありましたが)
しかし、調べてみると、牡蠣がいない地域はほぼないということがわかってきました。
つまり何が問題だったかというと、公設市場では食用のものがおいてあるため、牡蠣=真牡蠣という図式になり、真牡蠣はないということだったのだと思います。

なぜ沖縄に真牡蠣が養殖されていないのかというと、恐らく海水温が高すぎて、真牡蠣の養殖には向いていないというのがあるのだと思います。真牡蠣は海水温が20度くらいで産卵をするための準備に入ります。年間通して海水温の平均が20度を上回る地域では養殖に向いていないのです。

2.沖縄と牡蠣の養殖の深い関係

調べてみると、沖縄では真牡蠣の養殖は行われていないようでしたが、牡蠣の養殖と沖縄にはとても深いかかわりがることがわかってきました。
牡蠣の養殖のというと、海に木の枠が浮いていてその下に牡蠣がたくさん釣り下がっているものを想像しませんか?上に写真がありますね。これを延縄式垂下式養殖といいます。これは今までは比較的浅瀬でされていた養殖を、外洋でも行えるようにした画期的な養殖方法なのですが、これを考えたのが沖縄出身の宮城新昌さんです。牡蠣が業界では「世界の牡蠣王」として有名なのです(知りませんでした)


宮城新昌さんは明治17年に沖縄県大宜味村(おおぎみそん)で生まれました。明治38年にハワイのオハフ島に渡り、砂糖キビ耕作などをはじめ農業に携わりましたが、24歳のときにハワイから本土アメリカに渡り、ワシントン州に移り住みました。そしてそのときアメリカで盛んであった牡蠣養殖を目の当たりにしました。

 カキの養殖が有望な産業だと思った新昌さんは日本に戻り、大正14年に稚貝の付いた貝殻を縄に通し海中に垂下する方法「垂下式養殖(すいかしきようしょく)」を考案します。その時養殖の研究地に選んだのが、宮城県の石巻市の万石浦で、さらに昭和6年からは、牡鹿半島東海域に位置する荻浜湾でも牡蠣養殖と種牡蠣の採苗が行われるようになった。その後、この方法が広く国内へ普及し、さらに様々な人達の努力と知恵で現在の養殖方法へ移り変わり、外洋でも養殖の出来る形「延縄式垂下式養殖(のべなわしきすいかしきようしょく)」になっていきます。

3.沖縄の牡蠣の養殖の現在

沖縄での真牡蠣の養殖はうまくいっていなかったが、沖縄での牡蠣のニーズは大きく、輸送手段の整った現在では沖縄でも牡蠣を食べることができるようになっている。しかし、より新鮮なものを食べるためには養殖が不可欠である。
 2016年より沖縄の沖縄水産高校を中心として沖縄で世界一の牡蠣の養殖をする「OKIスター(沖縄オイスター)プロジェクト」というものが進められているようです。
またオイスターバーを展開しているヒューマンウェブが久米島では温度の安定した海洋深層水を使って育てた養殖牡蠣を出荷している。海洋深層水は極めて雑菌が少なく、「当たらない牡蠣」を目指していて、今後の動向が気になるところである。

さらに最近の研究で沖縄の金武湾にはいまでは極めて珍しくなったポルトガル牡蠣が自生していることがわかった。ポルトガル牡蠣はポルトガルという名前がついているは東アジア原産の牡蠣であると事がDNAの研究で分かっている。名前から分かるようにポルトガル牡蠣は過去にヨーロッパで盛んに養殖されていた経緯がある。そのことから養殖が比較的容易で,味もおいしかったようではあるが、現在では世界でポルトガルガキの商業的な養殖は行われておらず、市場関係者からは「幻の牡蠣」とも呼ばれている。この牡蠣を現在沖縄で試験的に養殖している。

4.沖縄で牡蠣の養殖ができるということの意味

安定的な供給と流通ができるようになれば、沖縄が牡蠣の生産地となるだけではなく、これから温暖化の影響で海水温が上がり、真牡蠣の養殖が困難になっていった際の養殖の参考になると期待されている。

参考
■三養水産の歴史「宮城新昌」と「辻隆三」■
http://sanyou-suisan.com/history.html
大宜味村蕎麦生産組合のブログ
https://oogimisoba.ti-da.net/e9556469.html
沖縄における牡蠣Crassostrea angulataの発見と活用
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9511/9511_danwa.pdf
沖縄に生息する牡蠣を通した自然環境を活かした地域振興の取組み
https://www.okinawa-bank.co.jp/_files/00042048/2018_kakiyousyoku.pdf